探していたものと、出会ったものが違った。
なぜ作ったか
とにかく名作だと思っていた。合理主義というドイツの地域性を感じながら、デザイン性も高い。フライトジャケットシリーズの中で、これを外す理由がなかった。

何を参照したか
掘ってみて印象に残ったのは、カマ底の穴とグリカン、そしてポケット袋の構造だ。
脇下の穴はベンチレーションとして設けられたものだが、結果として脇の厚みも回避している。一つの仕様が複数の問題を同時に解決している。そしてその穴の周囲には、手縫いのグリカン閂止めと丁寧な見返しが施されている。目立たない場所に、手間を惜しまない。
仕様が、重要性を語っている。
そういう服だった。
ポケット袋の構造も秀逸だった。上と下で大きさの異なる布を組み合わせ、底をくるむ仕様。強度を追加するための、静かな工夫だ。合理主義という言葉が、ここでも形になっていた。

何を選び、何を捨てたか
当初はゴートレザーを探すつもりで、姫路に行った。
しかし担当してくれた方の話を聞いて、考えが変わった。姫路はカウレザーが主産地だ。食肉になる皮を扱うことへの意義と思いを聞いた。ここで頼むならカウレザーだ、と思った。
その中でFUKUBORIらしいものを探していた時に、キメ細やかなキップに触れた。心が動いた。それだけのことだ。
鞣しはクロム鞣しを選んだ。ヌメ革のキナリを想定していたが、扱いにくさを考えると、購入してくれる方に優しい選択とは言えない。そうアドバイスをもらって、クロムに切り替えた。
染料だけでベージュに仕上げてほしい。
出来るだけ素に近いのが良い。
そうお願いした。
最終的には仕上げに顔料をほんの少しだけ加えている。製品として許容値ギリギリのムラになる可能性があると連絡があったからだ。ガッツリ顔料はせずに、ギリギリのところで仕上げてほしい。その一言で落ち着いた。
サイズはオリジナルより大きめに調整している。それ以外は、構造をそのまま受け取った。

この服は何者か
ゴートを探しに行って、キップに出会った。ヌメのつもりでいて、クロムになった。探していたものと、出会ったものが違った。
でも、それが正解だったと思っている。姫路の人と話さなければ辿り着けなかった革だ。産地に行って、考えが変わる。その経験がそのまま、この服の素材になっている。
