M65ジャケットは、不思議な服だと思っている。

フィールドジャケットの定番で、ベトナム戦争のアイコンでもある。戦争のイメージを持ちながら、ファッションの文脈でも長く愛されてきた。

その軌跡は、デニムに少し似ている。
反骨を示す物として扱われ、結果としてファッションになった。

そういう、少しねじれた成り立ちごと含めて惹かれる服だ。

原体験

僕にとって最初のM65は、17、18歳の頃に買ったインポートのストリートブランドのM65型だったと思う。木箱付きで、世界限定100着。そんなミーハーな動機だった。

今見たら、おもちゃみたいな作り込みだと思う。でも、それが悪いと言いたい訳じゃない。そういう物づくりだった、ということだ。

本物のM65に興味が移ったのは、パターンの仕事を始めてからだった。仕事として向き合うと、あれは正直かなり面倒な部類に入る。フードなんて省かれる事が殆どだし、簡単に置き換えられていく箇所も多い。でも、その面倒さの中に構造が見えてきた。

何を参照したか

1st、2nd、3rdとよく語られるけど、語られるのはディテールばかりだ。本当にシルエットは同じなのか。そこが気になって掘り始めた。

僕の見解では、ベースとなる構造は同じだと思っている。全く同じ個体をバラして比べた訳ではないけど、少なくとも根本の設計は大きく変わっていない。誤差の範囲内。ちょっと残念。でもスッキリした。僕の中でM65ジャケットといえば、という構造が確定した瞬間だった。

何を選び、何を捨てたか

その上で選んだのが1stだ。まずエポーレットが無いのが好きだった。2ndは進化の過程で、縫製に無理が出ている箇所がある。3rdは生産面でもかなり完成している。だから1st。

未完成ゆえの混じり合いが面白い。
整理され切っていないものにしか無い魅力があると思っている。

生地はコットン100%のバックサテンを選んだ。当時のM65はコットンナイロンだけど、今回はM43やM51を意識している。ミリタリー系の生地に強い生地のプロが、M51を独自に解析して作った生地だ。M65よりも重厚感がある。キナリで置き換えた時にも、その重さがちょうど良かった。

裏地の縫製は裁ち切りにしている。今の物づくりでは、正直あまり考えられない仕様だと思う。でも、表地は裁ち切りなのに裏地の肩は巻き縫いになっていたりして、何を良しとして縫製が組まれていったのかを考えさせられる。当時に思いを馳せる事を楽しんでいる身としては、敢えて採用せずにはいられなかった。

袖口のマチもそうだ。この仕様によって、縫製の難易度は格段に上がる。それ故に3rdでは袖口の構造自体が大きく変わっていく。でも、薄めの別布によるコントラストと見え方を考えると、断然1stに軍配が上がる。2ndを避けた理由の一つもここにある。

やり切る、という意味ではフードも外せなかった。衿のファスナーの中に収納されている、あのフードだ。カジュアルに着る上では活躍の機会は少ないかもしれない。でも、もちろん採用している。デザインをしないという事は、可能な限りやり切るという事と同義だからだ。

完成した佇まい

実はM65ジャケットには、少し使いづらいイメージを持っていた。僕自身も、どこか少し苦手だった。でも、いざ自分で作って着てみたらそんな事はなかった。尚且つ、コットンバックサテンの守られている安心感がすごくある。名作たる所以を、自分で着て感じている。

戦争のアイコンが、反骨の象徴になり、ファッションになった。
その服の1stを、キナリで作る。
未完成のまま完成へ向かうような構造ごと引き受けて、今の服として置き直す。
それがFUKUBORIのM65だ。

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