生地が決まった。

スモックとトラウザー

ベンタイルシリーズとして作るのは、スモックとトラウザーです。

ベンタイルという生地は、イギリス軍のスモックとセットで記憶されている生地。だからスモックを作るのは、ある意味で当然の帰結でした。生地の系譜をそのまま辿る。

トラウザーの元ネタは、スモックの対として存在したウィンドプルーフトラウザー。同素材の上下セットで、ドローコードのウエストと裾、裏地なし、ポケットは最小限。

実物を見ていて面白かったのは、この割り切りです。

パンツは防風の殻に徹する。収納はスモック側に集約する。上下をひとつのシステムとして設計しているから、パンツ単体では一見不便なほど何も無い。でもセットで見ると、全部に理由がある。

服は構造体である。まさにそういう話です。

この設計思想ごと、現代に翻訳します。

諦めたもの

実はもう一型、挑戦していたものがあります。イギリス軍のディスパッチライダースコート。

伝令兵がバイクで走るための、ゴム引きのコートです。オリジナルはゴム引きゆえにとにかく重い。これをベンタイルに置き換えられたら──そう考えて、動き始めました。

ただ、実物を読み込むほどに分かってきた事があります。

あのコートの核心は、生地ではなく「接着」にある。

縫い目の裏に共生地のテープを貼り、水の侵入経路そのものを塞ぐ。縫った上で、貼る。この防水構造こそが、あのコートをあのコートたらしめている。

だから、ベンタイル化するならこの接着を再現しなければ意味が無い。省略して形だけ似せた物を出すつもりは最初からありませんでした。

やれる事は探しました。

接着の工法を調べ、専門の加工先への技術相談を検討し、自分の手でテストする段取りまで組みました。その過程で見えてきたのは、ベンタイルという生地そのものが接着に向かないという事実です。超高密度織りの平滑な表面と撥水加工が、接着の障害になる。仮に見た目が付いたとしても、着て、洗って、剥がれたら。それが最悪のシナリオです。

良い落としどころは、見当たらなかった。

だから、諦めました。

あの構造を消してまで作らない。
FUKUBORIの編集は「元ネタの構造を消す変更はしない」事を原則にしています。
諦めるという判断も、構造を読んだ結果です。

いつか接着と正面から向き合える日が来たら、その時に改めて。

ベンタイルシリーズは、スモックとトラウザー。
この二型を新型として進める事になりました。