なぜ作ったか

フライトジャケットを掘ると決めた時、A2は最初から入っていた。逸話が残る服だから、というのが一つ。そしてもう一つは、レザーという専門外への興味だ。

布帛の服を作り続けてきた自分にとって、レザーは未知の領域だった。だからこそ、掘る理由があった。

何を参照したか

掘ってみて、フライトジャケットシリーズの中では一番構造の発見が少なかった。

腕周りの設計を見ても、可動性を意識した形跡はあまりない。ドイツ軍のジャケットが合理性を服の顔にしていたとすれば、A2はその逆だ。機能より先に、様式美がある。戦闘服でありながら、どこか格式を纏っている。

構造を読もうとしたら、
佇まいに先に負けた。
それがA2だった。

印象に残ったのは、レザーならではの裁ち切りの仕様だ。布帛では当たり前にロックをかける端処理を、革は裁ち切りのままにできる。針穴が残るため縫い直しが効かない繊細さと、裁ち切りで成立する大胆さが共存している。レザーという素材の論理が、そのまま縫製の仕様になっていた。

何を選び、何を捨てたか

革選びの経緯はBundeswehrと同じだ。ゴートではなく、姫路でキップに出会った。

ただ、A2においては「様式美を持つ服」という印象が先にあったため、革の質感がより重要だった。キップの滑らかでしっとりとした肌触りと、成牛より細やかな肌目。その上品さが、A2の格式と釣り合うと思った。

縫製はサンプリング元の仕様を基本的に踏襲した。リブの上にステッチを乗せる始末、前立て部分の左右の違い、縫い代を漉かない仕様。布帛では選ばない判断が、レザーでは正解になる。その論理を受け取った。

この服は何者か

逸話が残る服には、理由がある。A2は構造の面白さより先に、服としての説得力がある。掘る前から名作と呼ばれてきた理由が、実物に触れてわかった。

FUKUBORIがやったことはシンプルだ。その説得力を、キナリのキップレザーに置き換えた。それだけのことだ。

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